研究課題/領域番号 |
12J10683
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
近藤 あき 東京大学, 先端科学技術研究センター, 特別研究員(PD)
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キーワード | 主観的判断 / 意思決定 / 系列効果 |
研究概要 |
本研究課題の遂行において、本年度は(1)主観的判断における系列効果現象の検討、(2)系列効果の神経基盤の解明を目標とした。系列効果とは、順番に呈示される刺激に対して量的な評価(光の明るさ・音の大きさなど)を行うと、個々の刺激に対する評価が直前の評価に近づくようにバイアスが生じるという現象である。(1)については、顔画像に対して魅力度の評価をするといった高次判断を行ったときに、物理特性の評価の場合と同様に系列効果が生じるのか、あるいは物理属性に対する判断プロセスとは異なった判断のプロセスを経るのかという問題を検討した。実験では、顔画像に対して魅力度の評価を連続的に行ったときの、先行する刺激への評価と現在の刺激への評価の関係を調べた。その結果、顔の魅力度評定においても、物理特性の評価の場合と同様に系列効果が生じることが明らかになった。さらに、顔の魅力度評定では、先行する顔画像と現在の顔画像の性別が異なるときには、同じ場合に比べて系列効果が弱まることが新たに示された。これらの研究成果について、国際会議(ECVP2012)と国内会議(日本心理学会、日本認知心理学会)において発表を行い、国際誌に投稿した。(2)については、系列効果の神経基盤を脳磁図(MEG)を用いて検討した。実験では3段階の輝度刺激を連続的に呈示し、明るさを主観的評定する際の観察者の脳活動をMEGで計測した。その結果、左の側頭領域の神経応答は直前試行の刺激強度を反映し、明るさの主観的知覚と相関することが示唆された。この研究成果はUniversitas Psychologica誌にて誌上発表された。これらの研究成果は、本研究課題である、人間の高次意思決定メカニズムとその脳内プロセスを解明する上で有用な知見であり、翌年度以降の研究目標の土台を得ることが出来た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書の研究の目的に挙げた通り、主観的判断の系列効果に関する心理物理実験及び脳機能イメージング実験を行い、新たな知見を明らかにする成果を得た。また得られた成果について、計画通り、複数の国内・国際学会での発表及び学術雑誌への投稿を行っており、当初の計画を十分に実現しているため。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究では、実社会場面で生じる系列効果のメカニズムの分析を行うことを目標とする。主観的判断の系列効果に関して、教育・人事面接や競技審査など、現実の評価場面で実際に生じている事態について分析と実験的検討を行い、人間の幅広い意思決定プロセスの包括的理解を目指す。
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