研究課題/領域番号 |
12J10724
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
奥村 美紗子 東京大学, 大学院薬学系研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 樹状突起 / 嗅覚系 / 投射神経 / ショウジョウバエ / 微小管 / TBCD / Dscam |
研究概要 |
機能的な神経回路の形成には神経細胞の軸索と樹状突起が正しく配線する必要がある。その過程において、種々の細胞膜分子とその下流のシグナル経路の情報が統合され、細胞骨格分子がリモデリングされている。これまでの研究によりアクチン骨格のリモデリングに関わるガイダンス受容体が同定されているが、微小管がどのようなガイダンス受容体やその下流のシグナルによって制御されているのかはよくわかっていない。本研究では神経形態形成の分子機構を明らかにするために、ショウジョウバエ嗅覚系投射神経をモデルに用いた。投射神経の樹状突起は触角葉に存在する約50個の糸球体のうち、単一の糸球体へと投射している。また軸索は脳の高次領域へと伸長し末端において特徴的な枝分かれをもっている。ショウジョウバエの高度な遺伝学を用いることによって、投射神経の形態を脳内において、単一細胞レベルで観察することが可能である。私は投射神経の形態形成に関わる分子を同定するために、候補となる遺伝子dachsousの変異体表現型解析を行った。そしてバックグラウンド変異としてチューブリン折りたたみ補因子D (Tubuiin folding cofactor D (TBCI)))の変異を同定し、TBCDが投射神経の形態形成に必要であることを見出した。TBCDは5つのチューブリン折りたたみ補因子の一つであり、チューブリンニ量体の形成に不可欠である。TBCD変異体投射神経では、樹状突起が一つの糸球体ではなく複数の糸球体へと投射する異常がみられた。また軸索の退縮、微小管の異常も観察された。酵母2ハイブリッド法により、TBCDと相互作用する分子として、ダウン症細胞接着分子(Dsc㎜)を同定し、TBCDがDscamの機能に必要であることを見出した。現在本研究の内容をまとめ、国際学術雑誌へ投稿している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
樹状突起ターゲティング異常を示す変異体の原因遺伝子を計画通り同定し、さらに原因遺伝子の機能解析を進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画を一部変更し、触角葉に投射している細胞(嗅覚受容体神経、投射神経、介在神経)の触角葉の発生における寄与を, 遺伝学を用いてそれぞれの細胞を除去することによって検証する。また介在神経の発生過程を明らかにする予定である。
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