研究課題/領域番号 |
12J10731
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
福島 万紀 信州大学, 地域戦略センター, 研究員
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 入会林野 / 生活環境主義 / 生産森林組合 / 共同管理 / アクション・リサーチ |
研究実績の概要 |
平成25年度は、A集落における今後の森林の共同管理の方向性を探ることを目的とし、① A集落および周辺集落の世帯を対象とした森林利用の実態調査、② A集落の住民を対象とした共有山の今後の維持についての聞き取り調査、③ A集落で保存されてきた明治から昭和初期に記録された文書の分析、④ A集落の共有山の利用履歴のパターンごとに、現在成立している植生調査 を実施した。 その結果、① A集落の住民は共有山とその管理主体である生産森林組合の今後の存続について、維持コスト負担から共有山を手放すべきであるという意見と、共有山内の財産的価値を重視して今後も管理を続けるべきという意見に二分化されていること、② A集落とその周辺の世帯では、林内からの薪の採取やキノコ生産など小規模な自給的林業を継続していること、③ A集落では、1947年に共有山の登記名義人(複数名)を変更・追加することで、一人当たりに換算した際の共有山の持ち分面積を5町以下におさえ、共有山を維持する方針をつらぬいてきたこと、④ 共有山の植物相は、尾根頂部に近い場所、および谷筋に近い場所などの地形的立地条件によりも、過去の利用履歴と最後の利用時期からの経過年数の違いにより、大きく異なること、を明らかにした。 これらの結果は、地域の森林資源状況についての知識や情報が住民間で異なることが、森林の共同管理をめぐる認識の差異を引き起こしている可能性を示唆している。そこで研究代表者は、上記の研究結果をまとめた小冊子を作成し、A集落の会合において成果発表を行った。本研究は、地域住民の森林への関わりの歴史性、文化性、固有性に関する情報をフィードバックし、それらが新たな森林管理の構築に寄与する可能性を考察するアクション・リサーチを到達目標としているため、これらの動きは、最終年度の研究展開につながる貴重な成果となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、昨年度から引き続き取り組んできた文書の解読を予定通り進めることができた。また、植生調査も実施することができた。しかしながら、共有山内に植生調査に付随する利用履歴にかかわる調査が一部、来年度に持越しになったため、上記のように評価した。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は、これまで得られた植物種の資源特性について研究を進め、平成26年度に開催が予定されているA集落の共有山の今後の利用・管理にむけた話し合いの場において情報をフィードバックし、住民らによる新たな森林管理の構築にむけた活動を参与観察を実施する方針である。
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