最終年度は、① A集落の森林の共同管理にむけた新たな動向を探ることを目的とした住民に聞き取り調査、② 森林利用や森林の共同管理の島根県の山村における事例を相対化することを目的とした長野県における二つの山村(長野市大岡地区、下伊那郡天龍村)において聞き取り調査、③ 研究のとりまとめと論文の執筆、を実施した。 その結果、① 2013年の秋にA集落の住民が地域おこしと連動した農村ツーリズム活動を開始して共有山を観光資源として活用し、新規移住者を含めた住民を巻き込んだ森林の共同管理にむけた新たな動きが生まれたこと、② A 集落をふくむ島根県の事例山村の住民による自給的な林産物利用は、長野県の奥地的山村と比較すると多い傾向にあること、を明らかにした。また、本研究の成果はこれまでも雑誌論文への論考の執筆や、学会等での発表を積極的に行ってきたが、最終年度である平成26年度に、当該分野の専門学術誌である「林業経済研究」の査読付き論文が受理された。 これらの研究成果は、山村住民による自給的な林産物利用が小規模であっても継続していることが、森林の共同管理にむけた意識を再構築する際に重要である可能性を示唆している。本研究で実施したような森林への関わりの歴史性、文化性、固有性に関する情報を地域にフィードバックすることで森林の共同管理の再構築を試みるアクション・リサーチが発展するためには、この研究手法が成立するための既定条件をさらに探求することが必要である。
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