研究概要 |
私は冷却原子系におけるボース・アインシュタイン凝縮(BEC)や超流動など量子多体現象の相互作用の効果をベーテ仮説の厳密解を用いて定量的に明らかにし、量子多体現象の理論を構築することを目指している。そのために本年度は、可解模型が存在し実験とも比較・検証が可能な一次元ボース気体に着目し、可積分量子多体系のダイナミクスについて調べた。 我々の昨年度の研究では、一次元ボース気体においてダークソリトンと同じ密度および位相プロファイルを持つ量子状態を構成し、その時間発展を厳密に追跡した[J.Sato,R.Kanamoto,E.Kaminishi and T.Deguchi,Phys.Rev.Lett.108,110401(2012)]。そして、"緩和"現象や"再帰"現象を観察した。今年度は、量子ダークソリトンの時間発展を厳密に追跡し、再帰時間を厳密に求めた。我々は量子ダークソリトンのフィデリティの時間発展が周期構造を持つことを発見した。そしてその周期構造から、free bosonおよびfree fermion領域の場合、再帰時間は粒子数の二乗に比例して長くなることを明らかにした。また、相互作用が働く領域(c=0.01,0.1,10,100)のフィデリティの時間発展の様子も観測した。量子多体系において再帰時間を厳密に評価できる模型を提案し実際に数値計算をしたことは、今後の再帰時間の研究において重要で興味深い結果である。
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