研究課題/領域番号 |
12J10748
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
松澤 彰信 東京大学, 大学院薬学系研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 不斉触媒 / 銅触媒 / アルドール反応 / thuggacin B |
研究概要 |
私は昨年度、BINOL骨格を有するキラルなシャペロン分子がアキラルなアミド型配位子と比較的強い錯体を形成するという知見を得たので、本年度はその錯体を用いて触媒的不斉反応への応用を試みた。いくつかのキラルなシャペロン及びアキラルなアミド型配位子を合成し、様々な反応を試みたものの、残念ながら不斉誘起は見られなかった。しかしながらその過程で、プロピオン酸由来のチオアミドのアルデヒドのダイレクトアルドール反応が、メシチル銅錯体単独で(シャペロン非存在下)効率良く触媒されるという知見を得た。そこで私はこの反応の条件最適化を行い、またその有用性を示す目的でthuggacin Bの全合成研究を行った。 thuggacin Bには不斉炭素が8つあるが、その内3つはチアゾール環に隣接しており、チオアミドを用いた触媒的不斉ダイレクトアルドール反応を行った後にチオアミドをチアゾール環に変換することで効率的な合成が可能になると考えた。反応条件の最適化を行った結果、チオアミドの触媒的不斉ダイレクトアルドール反応は高収率・高立体選択的に進行し、得られたアルドール体は続く2工程でチアゾール環へ変換可能だった。このチアゾール中間体を種々変換することでthuggacin Bの全合成を達成した。 本研究はプロピオン酸由来のチオアミドを用いた触媒的不斉ダイレクトアルドール反応が銅触媒単独で進行するという初めての知見であり有機合成化学上重要な発見である。また全合成を通して示した通り反応の有用性も高いと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
上述の研究(チオアミドの触媒的不斉ダイレクトアルドール反応及び全合成)は興味深く重要な研究ではあったものの、元の研究計画からは少し外れる研究であったため。
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今後の研究の推進方策 |
チオアミドのアルドール反応の研究は一区切りが着いたので、シャペロン分子の研究に戻る。これまで合成してきたシャベックロン分子では不斉反応に用いた場合に不斉誘起が確認されなかったので、新規のシャベロン分子を考案し、合成したうえで様々な反応への応用を行う予定である。
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