研究課題/領域番号 |
12J10821
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
上本 季更 東京大学, 大学院理学系研究科, 特別研究員(DC2)
|
キーワード | 月 / マントル / 元素・鉱物組成 / 地形 / 分光観測 / 衝突盆地 / インパクトメルト / SouthPole-Aitken |
研究概要 |
月最大の衝突盆地South Pole-Aitken (SPA盆地)の初めてとなる鉱物・岩石分布マップを完成させ、このマップからSPA形成時の衝突による地殻掘削領域、インパクトメルトプールの分布と深さを推定。これと、鉱物の反射スペクトル等から算出したインパクトメルトの組成を用いて、未だ明らかにされていない月マントルの組成を解明し、月の成因および進化の議論に繋げる事を目的とし、研究を進めてきた。具体的な手順は、下記の通りである。 1. 地殻を構成する主要岩石である斜長石を含む岩石のSPA盆地内でのマッピングを行い、SPA盆地形成時の地殻の掘削領域を明らかにする。2. マントル由来と考えられる苦鉄質珪酸塩鉱物に富む岩石のマッピングを行い、SPA盆地内全域の岩石分布図を作成する。3. 1、2から、SPA盆地形成直後の構造復元を行い、下部地殻やマントル物質の露出範囲および衝突によって形成された衝突溶融物が大量に形成・集積したと考えられるインパクトメルトプールの分布領域を推定する。4. インパクトメルトプール内および周辺の岩石分布をさらに詳細に把握することにより、同プール内および周辺における岩相の層序、層厚を推定する。5. 4と最新のクレーター形成モデルを比較することにより、インパクトメルトプールの深さなどの三次元的構造を明らかにする。6. インパクトメルトプールの元素・鉱物組成を把握する。7. 下部地殻、月マントル物質の元素・鉱物組成の推定を行う。 上記手順のうち、現時点では1~4、および5の大半を完了している。現在は、5のインパクトメルトプール内の分化の有無を考慮に入れ、より正確なマントル組成の推定値を算出すべく検討している段階である。一方、インパクトメルトプールの表層の範囲は特定できたため、その元素・鉱物組成を用いて、分化をしていない場合における月マントルの元素・鉱物組成の推定は可能となった。今後の課題は、分化している場合におけるマントル組成の導き方を検討していくことである。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
出産、育児によりしばらく研究から離れていたことによる知識・考察力の回復に時間を要したことや、保育園空き事情から復帰後半年は子供を傍らに置きながら研究を進める必要を余儀なくされ研究ペースがこれまでより落ちたため、達成度はやや遅れたが、今年度からは子供を保育園に預け元の研究時間を確保できるようになったため、これまでの遅れを取り戻すペースで研究を進める予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
これからも交付申請書に概ね基づき研究を進めていく予定である。具体的には、・インパクトメルトプールの元素・鉱物組成を推定する(実行中)。・インパクトメルトプールの分化状況を考察する。・これまでに推測したデータや仮定を基に月マントルの組成の推定を行う。・地球マントルと比較してその違いや関係性を見出し、巨大衝突説にっいて考察する、というもの。子育てとの両立を図るため、子供の不測の事態によっては研究時間が削られる場合も無ではないが、削られた時間は家族の協力や休み等で補っていく予定である。
|