研究課題
本研究はネムリユスリカの極限乾燥耐性の分子機構解明を目指し、新規ストレスタンパク質「PvLEA」の網羅的な機能解析により極限乾燥耐性におけるPvLEAの生理・生化学および物理化学的役割を明らかにすることを目的とする。本年度は、ネムリユスリカの新規Lea遺伝子の探索および単離済みLEAタンパク質PvLEA4の機能解析を行なった。ネムリユスリカのゲノム情報からLEAをコードする遺伝子を探索した結果、28個のPvLea遺伝子を単離できた。得られた遺伝子配列から推定されるアミノ酸配列をもとにin silico解析を行ない、LEAタンパク質に特徴的な物理化学的性質(親水性の高さ、二次構造、無構造領域の有無)の推定およびモチーフ解析を行なった。これら28個のPvLea遺伝子の発現量が乾燥に伴い増大することはトランスクリプトーム解析から確認されており、今回単離した28個のPvLea遺伝子は全て、ネムリユスリカ幼虫の乾燥耐性に関与することが示唆された。今後、これらPvLEAの機能解析を進めることで、発現時期や場所、機能の違い等から複数のPvLEAの役割が明らかになることが期待される。LEAタンパク質は、乾燥時に他のタンパク質の凝集を防ぐ機能を持つことが知られているが詳細な機構は不明である。動的光散乱法にて乾燥・水和処理したタンパク質混合液の粒子径を測定したところ、PvLEA4の存在量の増加に伴い、乾燥で形成される他タンパク質由来の凝集塊のサイズが減少することが明らかとなった。この結果から、PvLEA4は乾燥時に形成される変性タンパク質の集合を物理的に妨げることで、凝集塊の形成を押さえることが考えられた。
2: おおむね順調に進展している
LEAタンパク質ファミリー遺伝子群の同定が終了し、in silico解析を行った。現在それぞれの組み換えタンパク質を作製しており、その後の機能解析のための評価系の構築も終了している。予定通り学会発表も行った。
今後、必要な組換えタンパク質を揃え、乾燥保護機能や物理化学的特性などを網羅的に評価していく。大腸菌での組み換えタンパク質発現ができないものについては、別の発現系(ブレビバチルス、カイコ-バキュロウイルス)の導入も検討する。さらに、データをまとめ、論文投稿を目指す。
すべて 2012
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件)
Biochimica et Biophysica Acta-Proteins & Proteomics
巻: 1824 ページ: 891-897
10.1016/j.bbapap.2012.04.013