以前に提出した年度計画では、Redox active ligandの設計及び合成を行い各金属種との複合体を網羅的に構築する予定であったが、私が前年度に本研究の過程で見出したコバルト触媒によるピリジンのC4位選択的なアルキル化の適用基質の拡大を行った。本反応は種々の反応機構解析の結果、当初想定していたC-H結合の酸化的付加/不飽和結合の挿入/還元的脱離といった反応形式では無くコバルトヒドリド種の形成/不飽和結合のヒドロメタル化/ピリジン環への求核的付加/ジヒドロピリジン中間体の酸化によるコバルトヒドリド種の再生により進行していることが示唆されている。本反応は①配向基を必要とせずに達成困難なC4選択的な反応を起こす事②還元的な環境での酸化プロセスによる触媒の再生という非常に珍しい反応であったことから本系の重要性が伺えた。まずは単純なキノリン骨格を使用した場合に於いては期待されたC4選択的な反応で無くC2選択的なアルキル化反応が見られた。このことから基質に合わせて金属中心の求核性のファインチューニングが必要であることが分かった。最終的に触媒種であるコバルトヒドリド種の系中発生法、溶媒などの変更により高いC4選択性にて反応が進行することが分かった。この成果はAdvanced Synthesis & Catalysisにて報告することが出来た。
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