研究概要 |
本研究では、異なる気候帯での水田におけるC・Nの循環を解明し、広域な水田での温室効果ガス(GHGs)排出量を推定するのに適したモデルを開発することを目的とする。本研究では熱帯に位置するタイ国と温帯に位置する日本の神奈川県平塚市の営農水田を利用して、広域の実験を行い、上記の目的を達成する。平成24年度は、上記の目的を達成するために下記の研究成果(1)~(3)を得た。 (1)休閑期の水田におけるCH_4(メタン)吸収 休閑期の水田において測定例がほとんど無い微気象学的手法(REA法、EC法)を用いて、GHGs(CH_4,CO_2,H_2O)フラックスを測定した。GHGsのガス濃度は、近年開発された波長スキャンキャビティリングダウン分光法(WS-CRDS)方式ガスアナライザー(G2301-f, Picarro社)を用いて測定した。実験期間中において、REA法と熱収支式によるH_2Oフラックスはほぼ一致し、REA法が休閑期の水田においても実用可能であることを明らかにした。日中において、CH_4が吸収されることが観察され、土壌温度の上昇により、土壌中のメタン酸化菌の活動が活発になり、CH_4吸収が大きくなったと考えられた。 (2)両国の水田でのGHGs発生・吸収調査 両国の水田においてGHGs(CH_4,N_2O,CO_2,H_2O)発生量、気象・土壌条件を長期間・経時的に測定した。熱帯の稲の栽培期の水田においてCH_4とN_2Oのフラックスと地温のピーク出現時刻に違いが生じていたことが観察された。地温以外にCH_4とN_2Oのフラックスの増加に影響を与えている因子がある可能性が示唆されたため、今年度、気象・土壌の環境条件をより詳細に調査していく。 (3)土壌ガス濃度の空間分布 2011年度に平塚市の営農水田にて行った土壌ガス(CH_4,CO_2,N_2O)濃度の多点測定の結果を基に、クリギングを行い、水田における土壌ガス濃度の空間分布・時空間変動を評価した。水田の水口、水尻付近での十壌ガス濃度が高いことが観察され、今生度、十壌の環境条件を用いてより詳細に調査していく。
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