研究課題/領域番号 |
12J10953
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研究機関 | 福井県立大学 |
研究代表者 |
森 裕美 福井市立大学, 生物資源学研究科, 特別研究員(PD)
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キーワード | 嫌気環境 / 組菌捕食 / 原生生物 / 従属栄養 |
研究概要 |
本年度は、光合成硫黄細菌などの一次生産者が生成した細菌細胞が、どのような生物群集に利用されているのかをStable Isotope Probing法を用いて調査した。酸化還元境界層では、緑色硫黄細菌や化学合成細菌などによる細菌細胞(有機物)は、細菌捕食性と考えられる繊毛虫や鞭毛虫、ワムシ類、カイアシ類の真核微生物によって利用されていることを明らかにした。また、酸化還元境界層では、一次生産者の細菌細胞を利用する細菌群はいないことが示された。 本研究では、水月湖をフィールドとして嫌気環境における有機物の生成、分解・無機化過程に寄与する微生物群集を明らかにすることを目的として研究を行ってきた。嫌気環境における有機物の生成過程には、緑色硫黄細菌と硫黄代謝を行う化学合成細菌が寄与し、これらによって生成された有機物(細菌細胞)を、繊毛虫、鞭毛虫、ワムシ類、カイアシ類が利用(捕食)していることが明らかとなった。水圏嫌気生態系における微生物ループの存在を直接的に示した研究は過去に無く、本研究は学術的に非常に重要な成果である。一方で、有機物の分解・無機化過程を担っている微生物群集を明らかにできなかった。一次生産者によって生成され、従属栄養性微生物によって捕食された有機物が、嫌気環境中でどのような挙動をしているのかを今後、最適な手法を用いて、この過程を解明する必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当該年度の計画のうち、一次生産者によって生成された有機物を利用する微生物群集を明らかにすることができたが、有機物の分解・無機化過程を担っている微生物群集を直接的に示すことが出来なかったため。
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今後の研究の推進方策 |
水月湖をフィールドとした本研究によって、水圏生態系における微生物ループの存在を直接的に示すことができた一方で、有機物の分解・無機化を担う微生物群集を明らかにできなった。有機物の分解・無機化に寄与する生物群集を明らかにするためには、安定同位体でラベルした有機物を用いたSIP法を利用するなど、最適な手法を選択する必要があると考えられる。
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