研究概要 |
植物から放出された生物起源VOC(BVOC)は大気中で反応を経た後、一部は二次有機エアロゾルを形成するが、その割合はフィールド測定(森林スケール)で明らかになっていない。また、森林大気の測定で観測されている種々の人為起源VOC(AVOC)の森林への沈着量の測定データは世界的に見ても少ない。本研究は、森林生態系から放出されたBVOCがBVOC由来二次有機エアロゾル生成に関与する制御要因を明らかにすること、群落スケールでのAVOC沈着フラックスの定量化を目的とし、以下の項目の集中観測を7月にカラマツ林、8月にアカマツ林で行った。 1.林上でBVOC,AVOCフラックスを簡易渦集積法で1時間毎に測定。 2.林内(樹冠直下)の全エアロゾルをハイボリュームエアサンプラーを用いて3時間毎に採取し、BVOC由来SOAトレーサー成分を定量分析。 3.BVOC,AVOC濃度の6高度分布を3時間毎に測定。 4.BVOCと反応性のあるO_3,NO_x濃度の4高度分布を15分毎に測定。 両サイトにおいて、カラマツ、アカマツから放出されるモノテルペン種はα-ピネンが主であり、その酸化生成物としてピノン酸、ピン酸、3-ヒドロキシグルタル酸)が検出された。また、林内植生からは両サイトともイソプレンが放出されており、その初期酸化生成物(メタクロレインとメチルビニルケトン)と高次酸化生成物として2-メチルグリセリン酸、2-メチルテトロール類が検出された。 BVOC由来二次有機エアロゾルトレーサー濃度は日中高くなる傾向があり、それらの反応は日中に森林域で盛んに起こっている。合わせてオゾン濃度の上昇により反応が促進される傾向が見られている。
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