• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2013 年度 実績報告書

その場顕微赤外分光システム構築と水反応場解析への展開

研究課題

研究課題/領域番号 12J11009
研究機関東京理科大学

研究代表者

宇部 卓司  東京理科大学, 基礎工学研究科, 特別研究員(DC1)

キーワード水 / 水溶液 / 赤外分光 / 水熱反応 / その場測定 / 水素結合
研究概要

本研究では、赤外分光法の弱点ともいえる水反応場におけるその場測定を主眼に置いた装置の開発と応用を行っている。本年度はA1薄膜と水との水熱反応のその場測定と、水の4相(氷、水、超臨界水、水蒸気)における赤外吸収スペクトルをカーブフィット解析し、それぞれの吸収要素の帰属を行った。
Al薄膜は膜厚に依存せず63℃付近より水と反応し水酸化アルミニウムの一種であるベーマイトへと改質された。加えて水との反応はこのベーマイトへの改質と、膜内への水の含浸という2段階の反応を経るプロセスであることが明らかとされた。また、水は水分子1個あたりの水素結合数が異なる集合体によって構成され、水素結合数が4の氷の状態から、水素結合数が0の水蒸気までを一貫して説明できるモデルの構築に成功した。水を室温から420℃まで等圧変化(30MPa)させた場合のスペクトルにこのモデルを適用し、各吸収要素の面積率で比較することで、低温では水素結合ネットワークに属する水分子が多くを占めているが、高温になるにつれて、ネットワーク構造が切断され、水素結合数が1である水の二量体が主要素になり、気体状態の特徴である振動の回転遷移状態に起因するP・R枝の出現する様子が確認された。NMR等を用いた他論文における実験結果との合致からも本モデルは支持されるが、本研究では室温のアセトン水溶液を用いて実験的に水同士の水素結合を切断した状態を作り出したものを同様に測定して、カーブフィット解析することで低波数側に存在するエレメントがアセトンの濃度に対して劇的に減少する様子を捉え、このエレメントが水素結合した水に相当することが判明した。また、水とエタノールとの混合状態を同手法によって解析したところ、水とエタノール分子は水溶液中では濃度に依存せず、互いの局所構造を維持しており、殆ど会合していないことが明らかとなった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

赤外分光による水の測定例は前例が少なく、吸収ピークの系統的なカーブフィット解析に耐えうる精度を実現した例は本研究以外には確認されていない。この水分子の赤外吸収スペクトルを解析することで、水分子の水素結合状態を評価する手法は新たな水中環境での溶質分子の水和状態を評価する手法として期待できる。

今後の研究の推進方策

本年度の研究成果により、水中の水分子の水素結合状態を赤外分光によって評価し、溶質分子との相互作用を解析するという『水反応科学』の分野の構築に貢献できたと考えられる。次年度の研究においては、この手法の応用として、エタノール水溶液を超音波により震盪させた場合の経時変化、生体分子(ATP等)のpHを変化させた場合の会合状態の変化を調査していく。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2014 2013

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (5件)

  • [雑誌論文] In-situ Transmission Infrared Spectroscopy of Hydroxylation of Aluminum Thin Film and Subsequent Dehydration Processes2014

    • 著者名/発表者名
      Takuji Ube, Takashi Harumoto, Takashi Ishiguro
    • 雑誌名

      Jap. J. Appl. Phys.

      巻: 53 ページ: 066701-1-066701-4

    • DOI

      10.7567/JJAP.53.066701

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Formation of Anti-Reflection Coating by Hydrothermal Treatment of Aluminum Films and Their Stabilization by Dehydration2013

    • 著者名/発表者名
      Aki Egashira, Takuji Ube, Yusuke Hosoki, Takashi Harumoto and Takashi Ishiguro
    • 雑誌名

      Materials Transactions

      巻: 54 ページ: 1025-1028

    • DOI

      10.2320/matertrans.M2013026

    • 査読あり
  • [学会発表] エタノール水溶液の透過赤外吸収スペクトルによる水和機構の解析2014

    • 著者名/発表者名
      宇部卓司, 中山璃子, 春本高志, 石黒孝
    • 学会等名
      日本金属学会2014年春期講演大会
    • 発表場所
      東京都
    • 年月日
      2014-03-21
  • [学会発表] In-vitro infrared spectroscopy for cancer diagnosis2014

    • 著者名/発表者名
      Takuii Ube, Kanako Yamamoto, Shuhei Ogawa, Takashi Harumoto, Ryushin Mizuta, Ryo Abe and Takashi Ishiguro
    • 学会等名
      International Symposium on Technologies against Cancer 2014
    • 発表場所
      Tokyo, (Japan)
    • 年月日
      2014-03-08
  • [学会発表] 顕微水中FT-IRによる"生きた"細胞の赤外分光とがんの早期診断への展望2014

    • 著者名/発表者名
      宇部卓司, 山本佳奈子, 春本高志, 石黒孝
    • 学会等名
      2014 Biomedical Interface Workshop
    • 発表場所
      沖縄県
    • 年月日
      2014-03-01
  • [学会発表] Infrared Spectroscopic Study on Hydrogen Bonding State of Aqueous Acetone Solution2013

    • 著者名/発表者名
      Takuii Ube, Toru Ishizuka, Takashi Harumoto and Takashi Ishiguro
    • 学会等名
      2013 Japan-Taiwan Symposium on Polyscale Technologies for Biomedical Engineering and Environmental Sciences
    • 発表場所
      Hokkaido (Japan)
    • 年月日
      2013-09-07
  • [学会発表] Development of In-situ Transmission FT-IR Measurement of Supercritical Water2013

    • 著者名/発表者名
      Takuji Ube, Takashi Harumoto and Takashi Ishiguro
    • 学会等名
      2013 MRS Spring Meeting
    • 発表場所
      San Francisco, California (USA)
    • 年月日
      2013-04-04

URL: 

公開日: 2015-07-15  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi