発達初期において、gap junctionを介した神経活動の同期が起こっており、正常な回路機能形成への関与が示唆されている。しかしながら、このような発達期の同期性が回路形成にどのような影響を与えるかは明らかになっていない。本研究は、connexinの発達期特異的なノックダウン(KD)により、gap junctionが成熟した神経回路の形成にどのような機能を果たしているかを大脳皮質の一次視覚野に着目して検証する。 まず、doxycyclineにより任意の時期にKDの誘導が出来るin vivo KDシステムの立ちあげを行った。次に、視覚野の発達期特異的なin vivo KDにより、方位選択性の表現にどのような影響が見られるかについての解析を行ってきた。その結果、connexin43のKDにより成体において方位選択性が増加するという知見を得た。このことは発達期のgap junctionが神経回路の機能形成に重要な役割を果たしていることを示している。 平成26年度は、これまでに得られたconnexinの方位選択性に対する作用のメカニズムを調べるために、発達期の個体における自発活動がconnexin43のKDにより、どのような影響を受けているかを解析した。In utero electroporationによりconnexin43をKDした個体(生後9-11日)でin vivo imagingを行った。解析の結果、KDにより、時間あたりの自発活動の数に影響は見られなかったものの、自発活動に参加する細胞の割合が、connexin43 KDにより顕著に減少することが明らかとなった。このことは視覚野神経細胞におけるconnexinが、自発活動の発生ではなく、自発活動の伝播に作用していることを示唆している。
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