PET画像による画像誘導放射線治療の実現を目指し、今年度はヒトサイズのOpenPET開発に取り組んだ。PETの画像再構成を行うためには、検出器の応答関数をなるべく正確にモデル化する必要があるが、ヒトサイズのOpenPETでは、検出器の数が多く、観測データの次元数(検出器の組合せ数)が膨大になるため、事前計算をせず、オンザフライで計算可能なモデルが必要となった。そこで、幾何学的な情報を元にパラメータを自動決定可能な非対称な2次元ガウス関数を用いた応答関数モデルを提案し、GPU計算が可能なように実装した。その結果、特に第一世代OpenPETであるDual-ring OpenPETの開放空間において空間分解能を改善することができた。今年度新しく開発したヒトサイズOpenPETのデータ収集システムは、従来電気回路で行っていた同時計数判定をソフトウェアで行うことで、シングル計数率を元にした補正法の開発や、フレキシブルなジオメトリのPET開発を可能にしている。一方で、ソフトウェアによる同時計数は、ハードウェアによる同時計数よりも一般的に速度が遅いという問題がある。具体的には、別々の検出器から送られてくるデータを並び替えるソート処理に最も時間がかかるが、それに対して、マルチコアCPU上での並列化による高速化を行った結果、実用範囲の放射能分布の場合で、データ収集よりも短い時間で処理が完了できるようになり、リアルタイム処理が可能となった。そして、これまでに開発してきた各システムを統合することでヒトサイズOpenPETのリアルタイムイメージングシステムが構築できる。今後、より放射線治療との組合せに特化した第二世代OpenPET「Single-ring OpenPET」のヒトサイズ試作機に適用し、性能評価を進めていく予定である。
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