研究課題
無線アドホック・ネットワーク(MANET)に関して国際標準化を進めているIETF MANET Working Groupでは現在、様々な研究者・企業から提案されたプロトコルの標準化を進めている。しかしながら、まだ今後数年間は解決すべき課題が多く残っている。本研究で対象とするMANETにおけるスループット向上の課題もこれらと合致しており、タイムリーな研究課題である。MANETは各ノードが自律・分散的にネットワークを構築するため、災害時などに利用できる有効な通信手段の一つとして考えられている。当該年度は、MANETテストベッドとシミュレーション・システムの実装を行った。また、MANETの問題点と研究課題を検証し、端末の移動による経路制御プロトコルの振る舞いとスループットに対する影響を調査・解析した。実施した研究をテーマ毎に以下に示す。1)2棟の建物間、屋内・屋外階段環境によるマルチホップ通信における特性分析2)ネットワークシミュレーション(ns-2,ns-3)を用いた様々な移動モデルにおける通信特性の調査3)補助ソフトウェアの実装1)2棟の建物間、屋内・屋外階段環境によるマルチホップ通信における特性を調査した。様々な通信環境における各経路制御プロトコルの特徴を分析した。また、経路表の更新プロセスと移動ノードによる影響について、通信実験を行うことで経路制御プロトコルを分析した。さらに、経路制御プロトコルの各メッセージの更新速度や経路選択アルゴリズムの違いによる影響についても研究を行っている。2)ネットワークシミュレーションを用いた通信特性の分析では、ネットワークシミュレータのns-2とns-3を用いて複数の通信が行われている中での経路制御プロトコルの問題を報告している。3)拡張モジュールの実装では、実験時の手間を削減するために、測定を行うための補助ソフトウェアの開発を行った。また、当該年度の班究費で購入したAndroidとiPadのためのツールの開発も現在行っている。
1: 当初の計画以上に進展している
実際にMANETに関する実験環境下を増築し、多種のプロトコル、伝搬モデルを評価した。また、ネットワーク・シミュレーション・システムに種々の移動を考慮したシナリオを実装し、実験との実測値を比較・解析した。本研究の成果として、学術論文が2編(第1著者1編)、国際会議が9編(第1著者4編)となっている。また、NBiS-2012国際会議では"Best Paper"賞を受賞しており、本研究の新規性と有用性及び国際性が認められたと感じている。
今後は、MANETの実験環境下でアンドロイド端末やiOS端末を応用したより現実的な実験環境を目指す。また、端末数を増やした実験や高速移動を行うロボット・ネットワークと車車間ネットワークへの応用を考えている。さらに、異なるトポロジと異なるフロー数の比較評価及び研究の総まとめを行い、博士論文の作成を行う。また、学会活動では、CISIS-2013、FTRA-2013の国際会議で論文を採録されたので論文発表する。更に平成25年度10月にフランスで開催されるBWCCA-2013に論文を投稿する予定である。
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International Journal of Space-Based and Situated Computing (IJSSC)
巻: Vol. 2, No. 2 ページ: 71-82
DOI10.1504/IJSSC.2012.047465
accepted, to appear in International Journal of Computer Systems Science and Engineering (IJCSSE)
巻: Vol. 27, No. 3 ページ: 173-182