研究課題/領域番号 |
12J11203
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
烏 暁明 東北大学, 農学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 体色左右差 / qPCR / ISH / レチノイン酸 / 無眼側黒化 / 色素前駆細胞 / 色素芽細胞 / 成魚型色素胞 |
研究概要 |
体色左右差の解析では、これまでのトラフグを用いた実験により、魚類体色(ヒラメ・カレイ類以外では背腹の色素差)のパターニングに関連する候補遺伝子として、メラノコルチン受容体、dio2、zic1、tbx15、ASIPがピックアップされている。これらのヒラメ・オルソログ遺伝子をクローニングし、塩基配列を決定し、これら遺伝子の左右皮膚での発現量をqPCRで解析を行なった結果、gch1、gch2とmc1rはH期(成魚型色素胞形成の前の段階、色素芽細胞の有眼側でのみ分化する時期)から無眼側の発現量の減少が観察され、左右差が現れることが確認された。 体色異常の発生機序を解明するための実験では、レチノイン酸暴露による無眼側黒化を実験的に誘導し、正常発生で発現の左右差が確認された遺伝子を用いて、qPCR解析とISH解析を行なった。qPCR解析によると、正常発生ではgch1、gch2とmc1rの発現量がH期から左右差が現れるが、G、H期のRA処理により無眼側の発現量の増加が観察され、左右差が無くなり、無眼側黒化が観察された。一方、I期のRA処理ではgch1、gch2とmc1rの無眼側の発現量の変動が見られず、正常に体色の左右差が形成された。ISH解析によると、正常発生ではH期の無眼側皮膚にgch2陽性色素芽細胞が存在しないことに対し、H期の無眼側皮膚をRA存在下で培養すると、無眼側皮膚にもgch2陽性色素芽細胞が出現したことが確認された。この結果から、ヒラメの正常発生では、背鰭基部に分布する色素前駆細胞がG期に左右対称に両側の皮膚へ遊走し、H期に有眼側でのみ色素芽細胞へ分化し、無眼側の分化が抑制され、I期に有眼側でのみ成魚型色素胞が形成され、体色の左右差が形成される。この色素前駆細胞から色素芽細胞に分化する時期にRAで刺激すると、無眼側にも色素前駆細胞から色素芽細胞への分化が活性化され、両側とも成魚型色素胞が形成され、無眼側黒化を引き起こすことと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
左右の体色パターン形成の上流にある左右皮膚で発現差がある遺伝子を探索することに着目し、qPCR解析によりgch1、gch2とmc1rはH期から無眼側の発現量の減少が観察され、左右差が現れることが確認された。体色異常の解析では、G、H期ヒラメ仔魚のRA処理により無眼側のgch1、gch2とmc1r発現量の増加とgch2陽性色素芽細胞の出現が観察されたことで、目的に向かって研究が進んでいると思っている。
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今後の研究の推進方策 |
RAの刺激で無眼側の色素前駆細胞から色素芽細胞への分化を誘導する、上流にある制御因子を解明することが重要であると考えられ、RA暴露してから24時間の時の仔魚からTotal RNAを抽出し、外社に次世代シーケンス解析を依頼した。これから、次世代シーケンス解析の生データを次世代シーケンス解析スフトウェアを用いて、アッセンブルと解析を進め、体色異常を発生させる因子とその発生機序を解明する予定。
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