研究実績の概要 |
本年度の研究では、RAの刺激で無眼側の色素前駆細胞から色素芽細胞への分化を誘導する、上流にある制御因子を解明することが重要であると考えられ、RA暴露してから24時間の時の仔魚からTotal RNAを抽出し、HiSeq2000で、100 bpのpaired-end法で配列を解析し、配列の生データをMaserのパイプラインを使って、次世代シーケンサーデータ解析を行った。ヒラメのようなターゲットのゲノム配列が未知であり、de novoトランスクリプトームアセンブルで配列を決定するところから解析を始まり、次に、リードをコンティグにマッピングし、発現量(FPKM) を算出した。さらに、二群間比較を行い、いずれかの二群間で有意に発現量が変動しているコンティグを抽出し、クラスタリングを行った。また、各コンティグの遺伝子アノテーションを付与し、最後に各クラスターで有意に出現頻度が上昇したGOの一覧を抽出した。 結果では正常と比較して、RA暴露により発現量が10倍以上増加した遺伝子として、RA分解酵素cyp26b を含む14遺伝子が得られた。また、発現量が1/10以下に減少した遺伝子として、骨基質であるostc を含む11遺伝子が得られた。これらのうち、RA分解酵素cyp26b 遺伝子が色素細胞分化に関連するかを調べるために、正常ヒラメの左右皮膚でのCyp26b1の発現差をqPCR法により調べた結果、変態期のG,H期では左右差が確認され、I期から左右差が無くなる傾向が確認された。以上から、ヒラメの変態期に起こる体色の左右差形成が、有眼側ではレチノイン酸により色素胞の分化が誘導されるのに対し、無眼側ではレチノイン酸分解酵素の高発現することにより、レチノイン酸が分解され、さらに、色素胞の分化を抑制されると考えられる。
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