研究実績の概要 |
Xpo1p (exportin 1, CRM1)は代表的なexportinであり、ロイシンリッチ核外輸送シグナル(NES)をもつ多様なcargoを核から細胞質へ一方向に輸送する。細胞内において輸送が効率的に行われるためには、核内でXpo1pがRanGTP依存的にcargoを積込む反応(核外輸送複合体の形成反応)が速やかに起こる必要がある。我々はこれまでに、核内に局在するRan結合蛋白質Yrb2pがXpo1p核外輸送複合体形成の反応速度を劇的に上昇させることを見出し、反応中間体に相当するXpo1p-Yrb2p-RanGTP複合体の結晶構造を2.22 A分解能で解いた。さらにXpo1p-cargo-RanGTP複合体(核外輸送複合体)の結晶構造も2.15 A分解能で解き、これらの構造比較からYrb2pによるXpo1p核外輸送複合体の形成促進機構のモデルを推測した。これまで、構造情報に基づいて作成した変異体を用いてin vitroおよびin vivoの検証実験を行いモデルを支持する結果を得てきたが、本年度はさらなる検証実験を行い、核内におけるYrb2pの作用機構を確立した。第一に、Yrb2pのRanBDがXpo1p-Yrb2p-RanGTP複合体から解離する反応のキネティクスを解析するための実験系を確立し、cargoがXpo1p-Yrb2p-RanGTP複合体に結合することによりYrb2pのRanBDの解離を促進することを明らかにした。また、出芽酵母の生細胞を用いてNuclear transport assayを行い、Yrb2pのFGリピートの機能的重要性を検証した。さらに、出芽酵母の生細胞内でYFP-Xpo1pとCFP-Yrb2p間で起こるFRETをacceptor photobleachingにより検出し、Xpo1pとYrb2pの核内における結合が、Xpo1pによるcargo核外輸送において重要であることを示した。以上の結果をまとめて、Cell Reports誌に論文を発表した。
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