研究概要 |
トランスポゾンの転移はゲノムにとって多くの場合有害である。本研究では、TSCシグナル伝達経路に関わる因子が栄養源枯渇という外部刺激によってどのようにトランスポゾンの発現、転移の制御に関与しているのかを明らかにすることを目的に研究を行った。平成24年度は、これまでの知見をふまえ、大きく3つの可能性を検証した。 ① トランスポゾンの転移がモニターできる細胞の作成 (結果)内部に人工的なイントロンを仕込んだkanamycin selection typeの配列を持った細胞を準備した。 ② tsc欠損株のDNA損傷を引き起こす薬剤に対する感受性の確認 (結果)DNA損傷を引き起こす薬剤ヒドロキシウレア、ブレオマイシン、カンプトテシン、紫外線処理した細胞の生育を観察した。トランスポゾンの発現を抑制することが知られている因子CENP-Bの変異株(abp1, cbh1, cbh2)に関しても、同様に観察した。結果的に、tsc欠損株ではどの薬剤に対しても特に強い感受性を示すことはなかった。 ③ トランスポゾン発現の可視化 (結果)より簡便にトランスポゾン発現を観察するために、GFPで可視化できる細胞を作製した。その結果、トランスポゾン発現はGFPの蛍光でモニターすることに成功し、興味深いことに、細胞質に2~3個のフォーカスを形成することがわかつた。 ④ 分裂酵母TORC1 (Tor2)のトランスポゾン発現の観察 (結果)tsc2欠損株で見られる窒素源枯渇に伴うトランスポゾン発現は、tor2欠損株で抑圧された。このことから、TSC-Rhb1-TORC1経路によつてトランスポゾン発現の制御がなされている可能性が示唆された。
|