研究課題/領域番号 |
12J40037
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
仙石 知子 早稲田大学, 文学学術院, 特別研究員(RPD)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 『三国志演義』 / 毛宗崗本 / 女性 / 義・忠・孝 |
研究実績の概要 |
今年度は、研究計画書に従って、「明清女性史研究と毛宗崗本『三国志演義』」「毛宗崗本『三国志演義』における「関公秉燭達旦」について」「毛宗崗本『三国志演義』における女性の忠」という三篇の学術論文を公刊した。 『中国―社会と文化』29号、2014年に掲載された「明清女性史研究と毛宗崗本『三国志演義』」は、明清社会におけるジェンダー構造や性規範に関する二つの異なる見方の妥当性を毛宗崗本『三国志演義』の女性の表現より考察した。異なる見方とは、一つは、儒教が朱子学から陽明学へと展開し、規範として社会に浸透することにより、女性への規制・抑圧が強化されたという主張、もう一つは、先進的な近世社会の始まりと評価し得るような女性の役割への尊重が見られるという主張である。 『三国志研究』9号、2014年に掲載された「毛宗崗本『三国志演義』における「関公秉燭達旦」について」は、関羽の表現に「男女の義」という規範が示されていることを明らかにした。毛宗崗本が著された清の康熙年間には、関帝信仰は、皇帝に崇拝されるだけではなく、民間に広く浸透していた。その際、関帝は自らを犠牲としても人を救う「利他の義」を強く保持していた。さらに、単なる財神を超えて、全能神として信仰されていた関羽は、毛宗崗本『三国志演義』において、女性の貞操を守る「男女の義」の体現者として表現される。 『東洋の思想と宗教』32号、2015年に掲載された「毛宗崗本『三国志演義』における女性の忠」は、時として両立しないことのある忠と孝の葛藤を表現する徐母の死去場面の分析を中心としながら、儒教の重要な徳目である忠が、『三国志演義』の中でどのように描かれているのか、という問題を女性に焦点を当てて論じた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
今年度、仙石知子氏は、研究計画書に従って、「明清女性史研究と毛宗崗本『三国志演義』」「毛宗崗本『三国志演義』における「関公秉燭達旦」について」「毛宗崗本『三国志演義』における女性の忠」という三篇の学術論文を公刊しました。 さらに、大東文化大学で取得した学位が、博士(中国学)であることから、早稲田大学において博士(文学)を取得する準備を始めております。博士(文学)を授与された後に、『毛宗崗本『三国志演義』の研究』として著書を公刊することも、出版社の承認を得ております。当初、『毛宗崗本『三国志演義』における女性の表現』としていた著書よりも、より大きなテーマで研究はまとまることになりました。期待以上に研究の進展があった、と評価できるでしょう。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、平成24年7月1日に開始されたため、平成27年6月30日まで研究期間が残る。その時間を有効に活用して、早稲田大学に二つ目の学位請求論文を提出し、学位の授与の後、著書として刊行すべく準備を続ける予定である。
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