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2015 年度 実績報告書

モロッコ農村部における出産をめぐるイメージ・医療知識の変容と身体化

研究課題

研究課題/領域番号 12J40078
研究機関京都大学

研究代表者

井家 晴子  京都大学, 人文科学研究所, 特別研究員(RPD)

研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2017-03-31
キーワードモロッコ / デンマーク / 妊娠 / 出産 / リスク / 医療人類学 / 助産師 / 帝王切開
研究実績の概要

10月より産休育休より復帰し、コペンハーゲン大にて研究員となった。同僚たちと活発な意見交換を行うことで、研究に関する重要な示唆を得た。
並行してデンマークにおける妊娠・出産のリスク概念と医療システムに関する調査を行った。デンマークでは、日本と同じく施設分娩が大多数を占めているが、出産に関して女性たちの肯定観は強い。一方で、ここ数年、助産師が中心となって、自宅分娩が飛躍的に伸びて来ている。こうした状況の変化の理由を探るべく10名余の自宅分娩経験者や病院出産経験者に聞き取り調査を行った。
出産のリスク概念を考える上で、日本では、帝王切開経験者は次回の出産はほぼ全例に対して反復帝王切開が行われているが、デンマークでは、経膣分娩(Vbac)が試みられるという点が印象に残った。医療スタッフは、帝王切開予定者には不安を払拭する実際的アドバイスを、また、経験者に対してはvbac を受けることができるようサポートする職能がある。産後は保健婦、母親グループへと申し送りがなされ産婦は地域社会から全面的に支えられる点でも自己の出産を肯定的に捉えることが可能となろう。さらに、有給の産前産後休暇が長いこと(夫婦で合計52週)、人々は無料の医療サービスに過剰な期待を抱いておらず、出産にこだわりを持ち、よりよいサービスを期待する者は、自宅分娩を選択したり、ドゥーラという出産の専門家に料金を支払いサポートを依頼していることも判明した。
3月下旬には、モロッコの調査に赴いた。農村部では1990年初頭より妊娠リスクに基づいた施設分娩が推奨されてきたが、施設分娩を選択するものは非常に少数派であった。だが、この数年、飛躍的に施設での分娩を望むものが増えて来ている。その背景として、聞き取りで、医療スタッフのコミュニケーション能力の向上、妊産婦の生活経験の変化、道路の整備などがあげられた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

昨年度は10月から特別研究員として復帰すると同時期に、デンマークに家族と共に渡航し、そこですぐにコペンハーゲン大学の研究員として研究活動を続ける予定であった。しかし、度重なる役所のミスにより、在住許可証を得て職場に行くことができたのは2ヶ月後、またデンマークでは厳寒の気候で幼い子供2人も病いに臥せりがちになっただけでなく、保育時間も非常に短いので単身での渡航とは異なり思うように活動することができなかった。

今後の研究の推進方策

デンマークでは気候も暖かくなってきており子供が病に伏せることも少なくなろう。また、今年度は6月中旬よりオランダに移動し、アムステルダム大学人類学部の研究員として在外活動を行う予定である。アムステルダムでは、保育時間がデンマークよりも3時間ほど長いので、研究時間を現在よりも増やすことが可能となる。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2016 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (1件) (うちオープンアクセス 1件)

  • [国際共同研究] コペンハーゲン大学人類学部(デンマーク)

    • 国名
      デンマーク
    • 外国機関名
      コペンハーゲン大学人類学部
  • [雑誌論文] 書評:松岡悦子著 『妊娠と出産の人類学--リプロダクションを問い直す』2016

    • 著者名/発表者名
      井家晴子
    • 雑誌名

      『コンタクト・ゾーン』

      巻: 7 ページ: 344-350

    • オープンアクセス

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公開日: 2016-12-27  

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