研究実績の概要 |
2016年度4月から6月中旬は、昨年度に引き続きデンマーク国のコペンハーゲン大人類学部、研究者グループ“Health and Life Conditions”に属し、2016年3月下旬にモロッコでフィールドワークを行った際のデータの分析を行った。 6月中旬から8月末の任期終了時までは、オランダ、アムステルダム大学人類学部にて在外研究を行った。医療人類学の大家Annemarie Mol教授指導のもと、“Health, Care & Body” グループに属し、妊娠出産のハイリスクに関する概念と人々の日常に根ざした「異常」「困難」の認識、身体イメージに関する研究を続行した。また、オランダの出産環境に関する調査も並行して行った。アムステルダム在住のモロッコ人コミュニティにもコンタクトをとり、女性たちにインタビューを行った。 調査を進めるにつれ、モロッコだけでなく、デンマークやオランダといった先進国においてもハイリスク妊娠出産に対する考え方が日本とは大きく異なることが明らかになった。例えば、モロッコだけでなく、デンマークやオランダでは、日本ではハイリスクと見なされる帝王切開後の普通分娩(Vbac)が日常的に行われている状況である。日本では子宮破裂のリスクを多く見積もり、多くの医療者がVbacに否定的で、行われている施設もごく一部に限られている。 2016年度の3月には、住友生命よりスミセイ女性研究者賞を拝受した。2016年8月末に特別研究員としての任期は終了したが、2017年度以降も、なぜ、リスクが高い妊婦に対して行われる帝王切開術をめぐる判断がこのように国によって大きく異なっているのかを研究し続けてゆきたい。
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