研究課題
本研究は、哺乳子牛特有の第四胃における乳汁の凝乳機構の生理的意義と消化器疾患との因果関係を解明することを目的に研究を進めてきた。初乳成分のうち、免疫グロブリン(IgG)は健康な子牛の育成に必要不可欠だということが常識となっている。H27年度までに第四胃の凝乳機構が効率的なIgG吸収に関与していることを明らかにし、初乳成分の代謝の解明に研究を発展させてきた。H28年度は初乳摂取前後の子牛の血清低分子化合物を二次元ガスクロマトグラフ質量分析計を用いて網羅的に解析し、得られたデータを多変量解析した。子牛の血清からは約1400の低分子化合物が代謝物として同定され、多変量解析の結果、血清の低分子化合物のプロファイルの特徴としては、第一に個体を、第二に初乳摂取後の変化を示すことがわかった。また相関分析を用いてIgGと同様に変動する化合物を抽出した。これは、初乳からのIgGの吸収は非特異的な吸収と考えられてきたため、もし非特異的であれば、IgGよりも小さい低分子化合物の多くがIgGと共に吸収され、血中濃度が増加することが予想された。しかし結果は予想に反し、初乳摂取後IgGと同様に増加する低分子化合物は乳糖をはじめとするオリゴ糖など数種に限られていた。この結果は、これまで考えられてきた生後24時間に限られた腸管でのIgGの非特異的な吸収を否定し、選択的な吸収の可能性を示唆した。さらに相関分析を用いて、初乳摂取後の時間経過と相関する化合物を抽出した結果、アミノ酸がIgGとは異なる増加様式で血中濃度が増えることがわかり、初乳成分の吸収機構の多様性を示唆することができた。以上の成果を7月の世界牛病学会、9月の日本獣医学会、1月には畜産分野では知名度の高い国際誌Journal of Dairy Scinceにて発表した。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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Journal of Dairy Science
巻: 100 ページ: 未定
10.3168 /jds.2017-12557