本研究は、QOLのような当事者の生活全般に及ぶ吃音の影響を軽減する治療を見据え、当事者の観点から吃音の問題を多面的・包括的に把握できる評価法を作成することを目的とする。 平成25年度は、24年度に行った成人吃音者へのインタビュー結果から、ICFのモデルに基づいた質問紙を作成すること、またその質問紙を使用した予備調査を行うことを計画していた。インタビユー結果の分析から、吃音による日常生活における困難として113の概念が抽出されたため、それぞれの概念に対する質問項目を設定し、全113項目から成る質問紙(試案)を作成した。項目はICFのモデルに基づき、セクション1(心身機能・身体構造)が9項目、セクション2(個人要因)が49項目、セクション3(活動・参加)が34項目、セクション4(環境要因)が21項目に分かれている。各設問の回答選択肢は5件法とした。現在までに質問紙を成人吃音者22名に対し実施し、20名分の分析を終えている。 20名の回答結果から、成人吃音者を群分けするために、クラスタ分析を行った。その結果、4つのクラスタ(I群 : 3名、II群 : 8名、III群 : 5名、IV群 : 4名)に分類された。各クラスタの特徴を明らかにするため、クラスタごとの各セクション得点の平均プロフィールを作成した。I群は全般的に困難度が高い群、II群は特定の場面で症状が顕著な群、III群は困難度が軽度で比較的適応している群、IV群は回避により生活上の困難を感じている群と推測された。以上のように、質問紙(試案)は、吃音のある成人を発話、心理、行動、社会参加等の総合評価によって下位分類でき、各人に合わせた支援法の選択補助ツールとなりうることを示した。
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