研究課題/領域番号 |
12J40185
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
辻田 有紀 東北大学, 学術資源研究公開センター, 特別研究員(RPD)
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キーワード | 歯根共生 / ラン科 / 系統分類 / 菌学 / 植物学 |
研究概要 |
本研究で対象とするラン科シュンラン属5種のうち、本年度は特にシュンランの採集に重点を置き、宮城県2集団、茨城県3集団、東京都3集団、千葉県3集団および鹿児島県2集団で調査を行った。採集したサンプルは菌根菌が感染している根組織を選別後、DNAを抽出し、菌類に特異的なプライマーを用いて核リボソームRNA遺伝子ITS領域を増幅して塩基配列を決定した。その後、DNAデータベースから相同性検索を行うことで、菌根菌の分類群を科もしくは属のレベルで決定した。その結果、採集されたシュンランの野生集団が、担子菌のツラスネラ科、ケラトバシディウム科、ロウタケ科、ベニタケ科およびカレエダタケ科に属する菌類と共生していることを明らかにした。ラン科植物では菌根菌パートナーをごく狭い菌群に限定している種類から複数種類のパートナーを持つ種類まで様々な例が知られているが、本研究で対象としたシュンランは菌根菌パートナーとして少なくとも5つの科にまたがる複数の菌群と共生していることを明らかにした。さらに、採集してきたシュンランの菌根サンプルから、菌根菌の単離培養を試みた。実体顕微鏡下で菌根菌の感染した根組織を摘出し、組織のけん濁液を菌用培地プレートに播いた。マルトエキス培地で単離培養を行い、得られた菌株を分子同定したところ、単離された菌はいずれもバーティシリウム属やクラドフィアロフォラ属に含まれる子のう菌群であった。野外採集サンプルでの調査結果から、シュンランの菌根菌は担子菌であることがわかっており、今回単離された菌株は菌根菌ではなく、植物に内生している病原菌もしくは内生菌であると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
24年度10月より研究をスタートし、わずか半年で本研究で対象としている植物のうち、最も重要なシュンランにおいて共生する菌根菌相を解明することができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、調査対象種としている残りの4種についても開花期の夏季を中心に調査を実施して共生している菌根菌相を明らかにし、シュンランの結果と比較することで本属植物の進化と菌根共生の関係を明らかにする予定である。シュンランからの菌根菌の単離については、培地や培養条件とともにサンプルの採集時期などを検討し、共生する菌根菌の確実な単離方法を確立する。
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