対象とするシュンラン属5種の菌根菌相について、前年度では、対象種の共生する菌根菌相の傾向を明らかにしたことから、本年度は集団数を増やして解析を行い、データを補完した。また、これまで成熟個体における菌相を明らかにしてきたが、成熟期と幼若期で共生する菌根菌相が異なる事例がラン科で報告され、対象種について幼若期の菌相を調査する必要が生じた。そこで、対象種5種の幼若期の菌相について研究協力者の協力をえて自生地播種法を用いて調査を行った。対象種の種子をナイロンメッシュの種子袋へ入れて自生地に埋設し、一定期間後に回収して幼若個体を採集し、DNAを抽出した後、菌根菌の種類を分子同定した。その結果、マヤランとサガミランの幼若個体は成熟個体と同様の菌根菌相であったが、中間型であるシュンランとナギランは幼若期と成熟期の菌相が異なり、幼若期は主に外生菌根菌のロウタケ科と共生していることを明らかにした。本研究成果は、日本植物学会第78回大会および日本森林学会第126回大会にて発表を行った。 また、今後菌根菌のシフト現象に関与する遺伝子群の探索を行うため、シュンラン属の独立栄養種スルガランと菌従属栄養種マヤランを交配して雑種を作出することに成功し、論文として発表した(H25年度の報告書欄に記載)。本年度は雑種F1個体を多数育成し、フラスコ内で開花させるとともに雑種個体の形質を評価した。本研究成果は、日本植物学会第78回大会で発表を行った。
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