本研究は、HIV感染ヒトnatural killer(NK)細胞高度生着マウスモデルを樹立し、HIV感染におけるNK細胞の動態、役割の解明を目的とした。これまでに、ヒト末梢血単核球(PBMC)を高度免疫不全マウス、NOD/SCID/Jak3^<-/->(NOJ)マウスに移植したHIVが感染可能なマウスモデルを構築しており(Hattori et al.Antimicrob.Agents Chemother.2009)、その技術を応用した。ヒトNK細胞マウスモデルの樹立は、NOJマウスに、ヒト末梢血単核球(PBMC)とマイトマイシンCで不活化した骨髄性白血病細胞、K562細胞を共移植し、ヒトNK細胞が選択的に増殖する、ヒトNK細胞高度生着NOJ(huNK-NOJ)マウスを樹立した。huNK-NOJマウスにHIVを接種し、2週後にHIV感染状況を解析した。実験・解析手法は、マウスの血液、脾臓と腹腔内細胞を回収し、フローサイトメトリー、ELISAにてCD4陽性細胞数、NK細胞数、HIV感染細胞率(HIV p24陽性率)および血漿中p24抗原量を測定した。実験マウス群としてPBMCのみを移植したhuPBMC-NOJマウスとhuNK-NOJマウスおよびそれぞれHIV感染の有無の計4群にて比較検討した。その結果、感染後のNK細胞数を比較すると全てのマウス群で統計学的有意差は得られなかった。しかし、血漿中p24抗原量をHIV接種したhuPBMC-NOJマウスとhUNK-NOJマウスで比較すると、huNK-NOJマウスでhuPBMC-NOJマウスに比べて約40%低値であり、NK細胞が高度に存在する場合、HIVが抑制されることが示唆された。 NK細胞がHIVの増殖を抑制することが示唆された。本研究は、NK細胞による抗HIV免疫療法の可能性を示すものであり、今後のさらなる研究に期待される。
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