地球の核は、液体の外核と固体の外核から成り、その化学組成は鉄を主要元素とし、ニッケルや軽元素(ケイ素、炭素、硫黄、水素、酸素など)を含んだ合金である。液体の外核は、活発な対流により地球磁場を作り出す事がダイナモ理論として知られている。この磁場は、有害な宇宙線から地表の生物を守るバリヤーの働きを担っている。したがって磁場の地球史スケールでの時間変動は、地表の生命の発展に対して重要な役割を果たす。核の熱伝導度・電気抵抗率は、地磁気ダイナモを考える上で極めて重要なパラメータであるにもかかわらず、高圧力下での輸送特性測定の困難さから、ほとんど制約されていない。 金属の熱伝導度は一般的にヴィーデマンフランツの法則をもちいて電気抵抗率から算出する事が出来る。したがって、本研究では高温・高圧下における鉄合金の電気抵抗率の測定から核の熱伝導度・電気抵抗率の決定を行う事を目的とする。 高圧下における電気抵抗測定には、ダイアモンドアンビルセル高圧発生装置に四端子電気抵抗測定法を組み合わせたものを用い、出発試料は純鉄と鉄にケイ素を固溶させた合金を用いた。本研究ではこれまでに常温下で100万気圧までの抵抗率測定に成功している。更にレーザー加熱を組み合わせることによって1500ケルビン以上の高温下における電気抵抗率の測定も行い、予察的な結果を得る事が出来た これまでの結果を総合すると、核の電気抵抗率は、従来考えられていた値よりも小さく、熱伝導度は高い事が考えられる。この事は、核の冷却速度も従来考えられていたよりもはるかに速くなければならなかった事を意味する。
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