研究概要 |
投票行動は政治参加・社会参加のもっとも基本的な手段であり、世論の動態のダイナミックスをとらえる主要な指標の1つである。本プロジェクト「JESIII(Japanese Election Study III)」は、過去の全国調査の実績を受け継ぐとともに、新しい課題として政治制度変革の効果と反響とを捉え、社会心理学・政治学・社会学における巨大な学術的な変化に対応する調査研究として実施されている。 2002年度にはこの研究の一環として、統一地方選挙前のパネル調査を実施した。このことによって全国選挙とは異なるレベルでの政治行動を把握することを目的とした。こうした「異なるレベルの選挙」の研究は、1967年の三宅・木下・間場の名高い古典的研究以来、体系的に行われておらず、貴重なデータを提供する機会となった。このことを考慮し、2001年度調査対象者と同一人物に対して、全国選挙と比較対象可能な形でデータを取得した。つまり、13年度調査の回答者(パネルサンプル=2,061人)、および補充サンプルとしての全国市町村の住民基本台帳もしくは選挙人名簿からランダムに抽出した939人を合わせた3,000人に対し、郵送調査を実施した。調査の主要項目は、(1)統一地方選挙に対する参加意識、選挙情勢認知、(2)政党支持、政党感情温度、投票政党意図、(3)内閣業績評価、業績期待、内閣支持、(4)過去の投票履歴、(5)政策争点認知と回答者との政策争点距離、各政党の争点立場認知、イデオロギー、(5)政治関心、(6)経済認識(公的、私的)、経済業績評価、(7)集団加入、集団の政治行動認知、(8)政治的情報環境認識としてのメディア接触、等であった。 一方、2001年度調査に対するデータ分析では、データの整備・解析を継続するとともに、科研費の進行途上ではあるが、書籍の刊行を計画・執筆し、科学研究費での出版助成を申請中である。合計11章から成り、第1部「意思決定モデル」、第2部「社会的な媒介項」、第3部「社会的・制度的制約の効果」で構成されている。
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