研究概要 |
本特別推進研究では,実験および理論化学的手法を駆使して「感銘直截・高効率・高選択的」な究極的有機合成を炭素クラスターの世界に実現し,これによって次世代の材料科学,ナノテクノロジーや医学に資する新しい物質科学を創成することを目的として研究を行っている。本年度は,これまでに確立した炭素クラスターの化学修飾反応の適用範囲を拡大すると同時に,最適化した化学修飾反応を鍵として炭素クラスターを基にした機能分子の設計・合成を引き続き行った。例えば,フテーレンへ10個の有機基を導入することにより,これまで合成が達成されていなかった環状共役系「[10]シクロフェナセン」の合成を行い,その構造や化学的に安定な性質,そして,電気化学的性質や光化学的性質を明らかにした。また,水中でフラーレンに無保護糖を5つ導入する方法も開発した。さらに,球状のフラーレンにコーン状またはカップ状の部位を取り付け,球とコーンおよびカップの分子認識による分子集合体の構築を行い,その液晶などの機能性を明らかにした。赤阪は,金属内包フラーレンの化学修飾反応にも取り組み,閉殻の金属内包フラーレンイオン種を合成する方法を確立し,それらの熱安定性,光安定性を解明した。分担者の松尾は中村と協力して有機金属化学,触媒化学方面への展開を行い,フラーレンの光や電子に対する刺激応答性を利用した新しい触媒になることが期待される種々のフラーレン-遷移金属錯体を合成した。
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