研究概要 |
本年度は,今後の研究展開のために準備的研究を行った。 1.金属ゲートのバイアス電圧で形成した単一量子ドットの分光測定を単一光子検出を通して行い,量子ドットによるプラズマ共鳴周波数が負バイアス電圧の増大により高周波側に変化することを見出した。この事実は,半導体量子ドットの閉じこめポテンシャルがわずかながら非放物線性を有している事を示しており,波長分解能の高い測定を行うことにより、今後新たな励起構造を見出す可能性を期待させる。 2.Siによるソリッド・イマージョンレンズを用いた空間分解能60ミクロンの走査型遠赤外顕微鏡の挿引を新た計算機制御にし,量子ホール素子検出器を組み合わせて量子ホール効果素子中の非平衡電子の空間的イメージング画像をより高密度で得た。さらに,今後,単一光子検出器の使用を可能とするために,3Heクライオスタットと低温駆動の精密XYステージを組み合わせた挿引顕微鏡顕系の設計を済ませた。 3.整数量子ホール系の端状態電子系が微細相互作用によって核スピンを分極し,核スピンの分極がホール抵抗に変化をもたらす現象(動的核スピン分極:DNP)をqbit操作に発展させるために、リソグラフィーによって作成した微小な金属ワイアーに高周波電流を流し,局所的核スピン共鳴(NMR)を引き起こすことに成功した。その際,振動磁場とともに振動電場によってもNMRが起こることを確認した。また,端状態に沿って直列に配置した2つの微小ワイアーによるNMR強度が異なることを見出した。 以上一連の実験によって1-bit操作を行う一歩手前まで研究を進めた。
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