研究概要 |
本研究では、磁性細菌Magnetospirillum magneticum AMB-1株のバイオマグネタイト形成機構解明のため、バイオインフォマティクスやDNAマイクロアレイ、LC-MS/MSなどを取り入れたトランスクリプトーム解析・プロテオーム解析に取り組んだ。また、これらの知見をもとに、in vitroにおけるバイオマグネタイト生成、機能性タンパク質をディスプレイしたバイオマグネタイト生産への応用を行った。 AMB-1株の全ゲノム解析を行い、4,967,148塩基対の塩基配列を決定した。また4559個のORFの予測とそれらの機能推定を行うことにより、トランスクリプトーム解析・プロテオーム解析の効率的な遂行が可能となった。次に、ゲノム配列を基に作製したDNAマイクロアレイを用いて、バイオマグネタイト生成条件と非生成条件における各遺伝子の転写量を比較し、バイオマグネタイト合成に関連する遺伝子群を明らかにした。また、磁性細菌の大量鉄取り込み機構は特異的な遺伝子の発現制御によるものであることが示されAMB-1株における2価と3価の鉄イオンの輸送系の役割が明らかにされた。バイオマグネタイト包膜上およびバイオマグネタイトに強固に結合したタンパク質を単離・アミノ酸配列を決定し、70個以上のタンパク質を同定した。その中の一つであるバイオマグネタイトに強固に結合しているタンパク質やその特徴的モチーフを有するペプチドを用い、in vitroで粒径の揃ったマグネタイト合成に成功した。バイオマグネタイトの応用研究として、新規なアンカー分子やプロモーターの検索を行うことによって、安定かつ効率的なディスプレイ技術の確立を行った。これによってGタンパク質共役受容体等の外来タンパク質をディスプレイした機能性バイオマグネタイトの簡便な合成が可能となった。
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