1.細胞分裂をモデルに時間空間特異的なRho作用を解析して以下の所見を得た。 (1)細胞分裂の過程でCdc42がmDia3を活性化して、紡錘体微小管のキネトコアへの結合を安定化し、染色体の配列と分離を調節していることを明らかにした。 (2)細胞分裂各期におけるGTP型Cdc42量を定量し、GTP-Cdc42がmetaphaseでピークを示すことを見出した。これが、Rho family GEFのEct2とGAP、MgcRacGAPによって制御されていることを明らかにした。Ect2とMgcRacGAPはこれまで、分裂終期のRhoの調節因子と言われていたもので、この結果は、同一のGEFとGAPが分裂の時期に応じてCdc42とRhoに働いていることを明らかにしたものである。 2.間期細胞を対象として時間空間特異的なRho作用を解析して以下の所見を得た。mDia1単分子の作用と動態をspeckle imagingにより解析し、この分子がアクチン繊維のbarbed endにあってアクチン重合とともに細胞辺縁より突出するように移動すること、すなはち、活性化mDiaが細胞の辺縁で真直ぐで長い特異的なアクチン線維を形成していることを示唆するデータを得た。 3.Rho経路の発生、生理、病態生理での役割の解析する目的で、RhoエフェクターのうちROCK-I isoformの遺伝子についてtargetingを行い、欠損マウスを作成した。ROCK-I欠損マウスは、閉眼異常と臍ヘルニアを呈し、この異常がそれぞれの部位におけるアクトミオシン束の形成不全によることが明らかになった。このことから、ROCK-Iが発生期におけるこれらの部位での細胞間を結びつけるようなアクトミオシンリングの形成に関与し組織閉鎖を行わしめていることが明らかとなった。
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