ゲノム解析計画によってもたらされた様々なリソースはバイオサイエンスの進展を支える貴重なインフラストラクチュアと位置付けることが出来る。これらのゲノムリソースと構造生物学的研究を橋渡しするような効率的基盤技術の開発が重要になるとの認識の下に今年度は以下の2つの技術の開発と拡張改良に取り組んできた。 (1)完全長cDNAクローンからORFをPCR増幅に晒すことなく任意の発現ベクターに移すORFリトリーバル技術 長鎖cDNAを用いた発現ベクターの構築は労力と時間を要する工程である。ORFのみをcDNAクローンから取り出すにはPCRによる増幅が避けられず、それが長い断片であるが故に変異が入り易いという困難を抱えている。そこで、我々は酵母の相同組み換え能を利用してdonorプラスミドからORFを全くPCR増幅に晒すことなくacceptorベクターにトランスファーする「ORFリトリーバル法」の確立を行った。結果として5kbp以上のDNA断片をミューテーションフリーでベクターに組み込む事に成功した。 (2)部分タンパク質ライブラリーを用いた2ハイブリッドフットプリント法による相互作用領域の同定 我々は前年度の本特定領域における研究でランダムに作製した部分タンパク質ライブラリーから目的に合致したものを選択するという逆転の発想に基づく相互作用マッピング法である「2ハイブリッドフットブリント法」とそれを可能にするdeletionby recombinationDBR)法による部分タンパク質ライブラリー作製法とを開発した。この成果に基づき本年度はこれを更に至適化し、マッピングの精度を上げる事を目指し、実用化レベルまで漕ぎ着けた。現在、出芽酵母網羅的相互作用解析データに対しての応用を検討している。
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