研究概要 |
1)神経特異的アクチン結合蛋白質clipinCはWD40ドメインとC末側のαヘリックス構造からなる分子である。我々はこの分子の機能解析のために結合分子の検索を進め、NADPHオキシダーゼ活性化のアダプター分子の一つp40^<phox>が結合することをすでに見いだしている。今年度、この結合領域の検討を進め、p40^<phox>PCドメインがclipinCのWD40ドメインと結合することが明らかとなった。また、このp40^<phox>をはじめとするp47^<phox>・P67^<phox>を介してRacのシグナルがclipinCに伝わり、アクチン骨格制御に関わることを示した。さらに、p40^<phox>・p47^<phox>・p67^<phox>分子群が確かに神経系組織にも発現し、clipinCと共局在することを免疫組織化学等で見いだした。 2)構造解析および蛋白質機能解析のため、バキュロウイルスを上回る大量蛋白質産生が可能なカイコ核多角体病ウイルス(BmNPV)を用いた発現系を導入している。我々は今までに8種類の蛋白質で発現に成功しているが、今年度、神経接着分子NCAMについて天然型だけでなく、糖鎖修飾領域を変異した分子の発現を行い、この系における昆虫型糖鎖修飾が哺乳類における糖鎖修飾といかに異なるかの解析を行った。さらに、いままで幼虫を用いた発現を進めてきたが、今年度から蛹(さなぎ)を用いても感染・発現が可能であることを見いだし、より簡易かつ蛋白質の精製の容易な系の確立を進めることが出来た。 3)細胞接着分子NCAM, TAG-1、およびそのリガンドであるコンドロイチン硫酸プロテオグリカンPhosphacan/Neurocanのカイコバキュロにより産生した蛋白質を用いた1分子観察操作法による解析を開始した。リガンド刺激をすることによって、免疫グロブリンスーパーファミリー接着分子群が会合すること、いかに情報を細胞内に伝えるかを解析する系を構築した。
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