1.骨髄非破壊法による自家骨髄移植法の開発:サルを用いて検討した。サルの長管骨から骨髄を吸引し空きスペースを作り、そこに遺伝子導入した自家CD34^+細胞を直接戻す。この際、選択的増幅遺伝子を導入することによって、移植後、生着した造血幹細胞を増幅できるかどうか検討した。本年度は1頭のカニクイザルを用いて本法を試みたところ、移植細胞の生着が確認された。さらに頭数を重ねて検討を続けたい。 2.選択的増幅遺伝子の改良:サルの造血細胞に対して毒性をもつ可能性のあるGFP遺伝子をベクターから取り除いた。また、選択的増幅遺伝子の分子スイッチにあたるエストロゲン受容体に点突然変異を導入することによって、内因性のエストロゲンに反応せずタモキシフェンなどの合成ステロイドにのみ反応する特異性の高い選択的増幅遺伝子を作成し、カニクイザルを用いてその有効性を試験した。一部のサルでは有効性が認められた。すべてのサルで有効性を得るためにはさらに強力な選択的増幅遺伝子の開発が必要であると思われた。 3.SIVベクターによるサルの造血幹細胞への遺伝子導入:サル免疫不全ウイルス(SIV)ベクター等のレンチウイルスベクターは、その感染に際して細胞分裂を必要としない特徴がある。造血幹細胞は分裂頻度が低い上、分裂させると容易に分化してしまうため、細胞分裂を起こさなくても遺伝子導入できるレンチウイルスベクターはきわめて有望である。サルを用いる実験の予備的検討として、NOD/SCIDマウスへの移植の系を用いて、SIVベクターによってヒト造血幹細胞へ効率よく遺伝子導入するための条件を検討中である。
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