唐代の老子解釈書として中心的位置をもった唐玄宗の手になる『道徳真経注』および玄宗の注をさらに疏解した『道徳真経疏』の成立に関して、その思想的・政治的背景から分析することが本研究の目的であるが、本年度は原資料の解読、関連資料の収集、整理が作業の中心となり、論文化された形での成果は未だない。現在一年目の成果として、最初の2つの論文にとりかかっており、玄宗注疏中の「妙本」の概念の成立を政治的背景Kら分析する作業にとりかかっている。前提的論文として「妙本の論理」を構想し、哲学的概念としての「妙本」がもっている一種の矛盾的内容に注目し、この矛盾的実態が、何ゆえに生じたのか、すなわち形而上的概念と捉えることによる主高性の位置づけと、その位置付けにもかかわらず内容的に従来の「道」概念以上に出ていないのはなぜかということを問うた。そしてその答えとして、「妙本の形成」という仮題の第2論文を構想し、前述したごとく「妙本」の要請は玄宗の置かれた政治的立場と密接に関連していたことを明らかにする。その後、玄宗の老子注における政治論である「理身理国」論に関する論文を予定しており、本特定領域研究の古典論の一環として貢献する予定である。
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