本年度の研究概要と成果は以下のように要約される。 第一に、19世紀に急速に発展した古典(ギリシア語・ラテン語)教育の体系化と制度化を推進したオクスフォード大学における大学(ユニバーシティ)および学寮(コレッジ)の資料の所在と内容の概略を把握した。その結果、ベイリオル・コレッジのベンジャミン・ジョウェット資料が最も包括的・網羅的であることが確認され、その一部を複写し、現在分析整理中である。特にここで注目されるべきは、膨大な書簡集であり、後述のインド官僚の中に彼の教え子が多数おり、古典教養のタームや思考様式と統治方法についての興味深い言及(プラトン、ローマ帝政支配など)がみられる。 第二に、法曹・実務家教育に関しては、予想以上に資料発掘が困難であったが、法曹学院の図書室資料とオクスフォード大学法学部資料を比較対照する作業を行い、ここでも19世紀後半に急速に教育体系が整備されてくることが判明した。 第三に、外交官ないし植民地官僚養成では、専門歴史家の本田教授(帝京大学)の協力を得てインド統治システムと官僚養成についての研究文献と資料を一部収集した。 第四に、具体的な成果として、古典教育の中の法廷弁論研究が、実際の法曹養成とどのように関わるかについて、ギリシア法廷弁論研究の特徴と歴史の分析という方法で明らかにし、公刊した。 最後に、2001年9月に開催された、本特定領域研究の国際シンポジウムにて、マリー博士(オクスフォード大学)の発表の翻訳、通訳、紹介などをおこなった。本原稿は後日研究成果としてまとめられて公刊の予定である。
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