本年度は、本特定領域研究および報告者の担当した計画研究の最終年度にあたる。総括班研究の一環として、平成14年9月に開催した「国際シンポジウム」および調整班研究(B03)の活動にも報告者は積極的に参加したが、それらの報告ほ総括班報告および調整班報告に譲り、以下では、計画研究のみに焦点を合わせて報告する。 第一に、平成14年8月、1咋年に続いてオクスフォード大学ベイリオル・コレッジ図書室を中心に、19世紀オクスフォード大学改革の中心的人物、ベンジャミン・ジョウエット関係資料を調査・分析した。その結果、(1)ジョウエットは大学(高等)教育の量的拡大を古典教育の普及を通じて行った。例えば、一方で彼は古典作品(プラトンなど)の英語訳を行い、他方で中等教育の充実、オクス・ブリッジの女子コレッジやオクス・ブリッジ以外の大学の新設(例、ブリストル大学)にも助力した。 第二に、古典教育と法律家・実務家義成の関係に関して、19世紀英領インド官僚登用(選抜)試験に占めるギリシア語・ラテン語の比率の高さから、いかに古典教育修得者(オクスフォード・ケンブリッジ卒業者)を優遇しているかを、資料から実証的に明らかにした。他方、法学教育に関する古典教育の影響については、残念ながら本年度に明らかにすることはできなかった。但し、オクスフォード大学法学部の19世紀からの歴史を概観するに、この時期の法学教育は、まだ法曹学院の影響が大きく、大学での法学教育は極めて小規模だった。 最後に、残された問題として、19世紀大学改革全体の構造、聖職者養成と古典教育の関係など、大きなテーマがあり、今後も研究を続けていく予定である。
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