『全元散曲』の入力を完了し、その検索を利用して、散曲の作品の中における季節表現、愛情表現の多様性と特色について考察した。また散曲をはじめとする元曲全体の先行作品として重要な地位を占める金代の『董解元諸宮調西廂記』について、特にその物語の時間推移の構造とそれにともなう季節表現について詳しく考察し、それが原作である唐代の伝奇小説作品、元〓『鴬々伝』の内容をいかに改変し、豊富にしたかを、主にそこに用いられた宋代の詞の作品との関係によって論じ、またそれが次の元代の雑劇で中国演劇史上最大の傑作と言われる王実甫の『西廂記雑劇』においてどのように変容しながら継承されて行ったかについて、実例を検証しながら説明した。
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