平成13年度と平成14年度にわたる本研究は、前回の平成11・12年度の「近衛家煕考訂本『大唐六典』の研究」を継続して、京都大学附属図書館新収の家煕自筆『大唐六典』稿本を吟味するとともに、天理図書館の古義堂文庫蔵『制度通』の底本を精査し、中国制度典籍の受容の特色を明らかにせんとして着手した。 新井白石自筆の写本に近衛家煕が自ら書き加えた『大唐六典』の稿本を精査して、近衛本『大唐六典』全30巻の成立過程を綿密に跡付けるのを目的とする研究を開始し、前回は巻1から巻5までと巻30を重点的に調査した。今回は巻6から巻9までを重点的に調査した。これにより、全30巻のうちの10巻分、唐の中央政府の中核である三省六部と地方官庁についての巻々をすべてを検討し終えたことになる。 一方、伊藤東涯撰の『制度通』全13巻は、古義堂文庫所蔵の『制度通』刊本時の底本である、伊藤東所(東涯の三男)の校訂本と、刊本の際に削った『制度通刪』全1巻の全文、合計873コマのA5判での複写を入手することができ、『制度通刪』を慎重に検討し、通行本との校勘をした。初めて『制度通』編纂の経過を明確にすることができた。 『制度通』に対する考察を重ねていた最終段階で、萩野由之・小中村義象の共著である『日本制度通』全3巻の存在を知り、『制度通』と『制度通刪』との比較検討を通じて、明治中期に上梓された『日本制度通』の特色を明確にすることができた。
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