研究課題/領域番号 |
13018229
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
今西 裕一郎 九州大学, 人文科学研究院, 教授 (90046219)
|
研究分担者 |
坂本 信道 京都女子大学, 短期大学部, 助教授 (20249379)
小西 貞則 九州大学, 数理学研究院, 教授 (40090550)
室城 秀之 白百合女子大学, 文学部, 教授 (80174324)
|
キーワード | 源氏物語 / うつほ物語 / 品詞の計量分析 / 数量化3類 / 物語の文章 |
研究概要 |
すでに初期入力を終え、コンピューター辞書による単語分割の施されているデータベース底本(前田家本)本文をもとに、前年度までと同様の手順により、作成済みの巻以降のデータベースを作成し、「うつほ物語」の本文データベースを完成させた。 それを用いて、品詞分布および形容詞、形容動詞、助動詞、助詞、副詞の5品詞(使用度数上位20語)につき、数量化3類による分析を行い、「源氏物語」の数量化3類分析のデータとの比較検討を試みた。 ただし、データベースの不備により数量化3類の分析に使用できたのは、「うつほ物語」20巻中の12巻にとどまり、また、分析を上記の5品詞に対してしか施せなかったのは遺憾であった(3月末には全20巻、全品詞を対象とした分析態勢が整う予定である)。 上記5品詞に即しての数量化3類による分析は、物語の文章の性格において「源氏物語」と「うつほ物語」とが、統計的に有意味的な相違を示すという結果を導き出した。 もっとも、この二つの物語の文体の相違は、従来も直感的な印象としては指摘されていた。しかし、今回の数量化3類による分析の結果、その相違は、具体的な主要語彙と両物語の各巻との相関という形で、客観的に示されることになった。 一例を挙げれば、形容詞、形容動詞、副詞の場合、基本的・客観的な意味の語が「うつほ物語」の各巻の近くにまとまって分布するのに対し、主情的意味の語は「源氏物語」の各巻の近くに集まるという、かなり明確な差異が見られる。これは「うつほ物語」の文が客観的な語の多用による平板な叙述を基調とするのに対し、「源氏物語」の文が感情・心理の起伏に裏付けられた陰翳に富むものであることを、具体的に証明するものである。
|