研究概要 |
本年度の研究実績は以下の通りである。 1、ジャイナ教の哲学書である『ドゥヴァーダシャーラ・ナヤ・チャクラム』の第4章、第5章の読解をすすめた。このテキストは、インド古代において各種の学派が形成されつつある時期の哲学的議論の実態をよく反映しているものである。そこで展開される議論の背景には、『マハー・バーシュヤ』(MBh)に典型的に見られる文法学派の議論の枠組みと問題設定がある。本年度は、「実体」(dravya, bhava)をめぐってなされた議論を中心に研究した。同時に電子テキスト化を行った。(電子テキスト化は、このテキスト全体を対象としている。)このテキストの本文は、注釈文献に基いて再構成されたものである。注釈部分を含む全体の電子テキスト化によって、より正確なテキスト校訂を目指している。 2、「古典の世界像」(A04)班では、「魂論の諸相」をテーマとして共同研究が展開されている。その研究会において、本代表者は、「ブラフマニズムの伝統における魂論の展開」という発表を行い、インド仏教、ギリシャ哲学、中国哲学、イスラーム哲学の専門家たちとの対論の中で、「アートマン論」に関わる比較論的考察を行った。本代表者が進めている言語論の比較論的検討は、インド中世の神秘主義を対象とするとき、「神と魂をめぐる言葉」の研究へと展開するものである。 3、『ヴァーキヤ・パディーヤ』(含ヴリッティ)全体のテキスト・データベースの作成とそれを利用した語彙分析研究は続行中である。
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