今年度から研究分担者として参加した中川は、南アフリカで話されているグイ語の辞書データベースの拡大改訂、編集をおこなった。また、ナミビアで消滅の危機にあり、早急に記録を残さなければならないコイサン諸語の予備的調査をおこない、3つの中部コイサン語の言語学的同定に成功した。稗田(研究代表者)は、前年度にひきつづき、ウガンダ、カンパラにおいてクマム語とサミア語の調査を行なった。クマム語は、2、3万の話し手しか存在せず、調査が急がれる。クマム語は、系統を同じくする近隣の言語と較べると、言語構造をかなり大きく逸脱し、変化した。その要因は、定義的には言語崩壊とはいえないが、消滅の危機にある言語であるからであろうか。研究の参加者は、これを明らかにすべく議論した。サミア語は、まだ緊急度が低いが、遅かれ早かれ調査を必要とする事態となろう。今年度から研究協力者として参加した宮崎は、アンコーレ語とニョレ語の調査をおこなった。とくに言語共同体をはなれて都市に住む話し手がどのような戦略で言語保持しうるかをテーマに社会言語学的調査をおこなった。今年度から参加した塩田(研究協力者)もナイジェリアにおいて都市にでてきた話し手がその言語をどのように保持するかを中心に、都市に暮らす話し手が話す変種における言語変化を含めて調査した。これら都市での社会言語学的調査は、今日のアフリカにおける急速な都市化による言語変化を観察するうえで重要な課題である。
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