研究概要 |
政府開発援助(ODA)供与額が世界第1位となっている我が国の国際開発分野における高度なプロフェッショナル養成のための教育・研修教材として生きた現実事例に即したケース・メソッド教材が1990年代はじめから国際開発高等教育機構(FASID)のケース・ライブラリーなどで蓄積されてきた。海外の大学や国際開発金融機関ではこうしたケース教材のマルチメディア化が急速に進んでいるが、我が国においてはほとんど見当たらない。とりわけ、日本による国際開発援助案件についてのマルチメディア・ケース教材はおそらく皆無である。この分野でのマルチメディア・ケース教材化は、日本やアジア型国際開発アプローチについての学術研究の進展だけでなく、国際開発に携わる人材養成にとっても重要性が高いと考えられる。 今日の国際開発分野において重要な課題となっている開発案件の環境配慮については、従来のテキスト・ベースの情報だけでなく動画、静止画、音声など多様な媒体情報を使いながら学習することが効果的である。本研究では、日本のODAをめぐる「開発と環境」の理論的、政策的課題をフィリピン・バタンガス州におけるカラカ石炭火力発電所プロジェクトを通じて学習するためのマルチメディア・ケース教材(Calaca after 1992:Technology,Democracy,and Sustainable Development in a Coastal City of the Philippines)を開発した。
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