研究概要 |
世界の印刷文化が東アジアに於て始まったことは周知の事実であるが,起源については必ずしも定説を見ていない。中国大陸・朝鮮半島の古印刷資料の原本調査を引き続き進め,日本の百万塔陀羅尼・古版本の調査も引き続き進めて,東アジアの印刷史から見た日本印刷文化の起源を実証的に解明し,共同研究の中でそれぞれの印刷の機構について考察して,出版文化と社会変革についての検討を行った。 研究代表者石塚晴通は,11月28日・29日に仙台国際センターに於て開かれた「東アジア出版文化国際学術会議」の記念講演I「中村不折旧蔵の西域出土漢文仏典について」(竺沙雅章)及び記念講演II「朝鮮時代における中国語の教育と教材」(鄭光)の司会を担当し,質疑を通してそれぞれの研究の特定領域研究の中での意義を明確にした。また併設の「東アジア出版文化展」展示の,国宝『史記』等3点の解題を執筆した。 また,研究代表者石塚晴通は,韓國日語日文學會創立25周年記念国際学術大会の基調講演として「異文化における漢字受容の諸問題」(『韓國日語日文學會國際學術大會發表論文集』pp.1-7)を発表し,漢字字體,漢文訓読,典籍の国際的交流・共有,漢文古版本の内容を扱い,特に漢字字體及び典籍の国際的交流・共有に関して,中国・韓国・日本に於て典籍が伝来し書写・刊行される際に,それぞれの国・時代の標準に直されることを実例を挙げ,画像データを示して実証的に解明した。また,日本の百万塔陀羅尼は,印刷の「刷る」工程の無い印本であることと,複数印を同時に下向けに捺した印本であることを,画像を示して解明した。
|