研究課題
特定領域研究
1)江戸時代における蘭学関係科学書の出版状況を調べるために、天文暦算書、物理・化学書、航海術書、砲術書について数量的調査を行った。分析の対象とした点数はそれぞれ、天文暦算関係書333点、化学書84点、物理書11点、航海術書8点、砲術書262点である。2)天文暦算書333点では、暦書類が45%を占め、以下天文一般書33%、須弥山説16%、その他6%である。その継時的変化の分析では、19世紀には天文暦算関係書の出版点数が18世紀に比べ倍増していることが判明した。この増加の傾向は既に18世紀の第四半世紀に現れているが、19世紀にはいっそう顕著となる。おおまかな傾向としては、江戸時代前半は暦書類の出版が、後半は天文書一般の刊行が優勢であり、その転換点は安永・天明期にある。須弥山説関係書は幕末に出版点数が著しい。3)物理学・航海術関係書はサンプル数が稀少のため、有意義な分析結果が得られないと判断される。ただ安政年間に天文方による西洋航海術書の翻訳・研究が見られ、従来の天文学のみならず、時代の要請に天文方が応えようとした姿勢が認められる。化学書では、舎密または舎密加という文字が題名にみえる書の総数は44%にのぼり、そのうち65%弱の書が宇田川榕庵の著書で、江戸時代西洋化学導入における榕庵の役割がいかに大きいかが判明する。4)兵学の中でも、西洋兵学導入の糸口をつけた砲術を取り上げ調査・分析した。17世紀前半は総点数の14%とかなりの数をみせるが、以後中だるみの趨勢を示し、19世紀になって一挙に67%へと増大する。これはそれまで200年間の累積点数の約2倍にあたり、18世紀末から19世紀はじめのロシアの南下やイギリスの進出による対外関係への危機意識の表れとみなされる。このことより、一般に言われる幕末の蘭学が兵学・軍事科学中心へと転化したという説が裏付けられる。
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