昨年までに収集した族譜についての分析を行った。特に、系譜記録に関する様式の違いに即して、従来から手元にあった族譜についても、あらためて再検討し分類を行った。こうした中で、特に対極的な形式・性格をもつものとして、(1)海南省〓州市地区の〓州話話者の諸宗族が保有する大型一枚布形式の族譜と、(2)同市の符姓宗親会が編纂した符氏の宗譜ならびに広東省珠江デルタ地域の黎姓宗親会編の宗譜をとりあげ、それらの性格を徹底して比較検討することにした。(1)については、養子や兼〓等について正確に記し、祭祀継承者を明確にすることに特に意を配ったその系譜記録上の特色を詳細に分析した。また、(2)については、人名録あるいは紳士録としての性格が優先され、系譜上の不連続、多様性については寛容なその性格を明らかにした。こうしたこれまでに収集した資料を基に分析を進めることと並行して、国内の研究機関において所蔵族譜の閲覧、研究者との情報交換等にも努めた。また、平成16年11月には広東省佛山市順徳区において現地の宗族活動についての調査を行った。同調査は、中国の中の経済的先進地域において、そうした経済上の豊かさが族譜編纂等の宗族復興活動にどのように影響しているかを見極めることを目的とするものであった。この結果、同地方のような経済的な最先端地域では、必ずしも経済的余裕が宗族などの復古活動には結びついていないことが確認された。そして、こうした一連の研究の成果を、最終的に成果報告書の形でまとめ、公表した。
|