1、『皇明資治通紀』の編纂経緯についての研究 一つには、明末嘉靖年間に始まる実録副本作成事業と前後して活発化する「野史」も含めた国史編纂の動きとの相互関係を探った。具体的には、『皇明資治通紀』の記載と『明実録』の記事を比較検討した結果、陳建が通紀の編纂にあたって、『明実録』乃至は、その抄本を利用しているという確信を得ることができた。 もう一つは、広東出身の著者陳建の「家伝」「墓誌」など伝記資料を収集し、通紀の編纂経緯や編纂意図を明らかにするとともに、その師弟関係や交友関係から、『明実録』の抄本を入手する可能性を探った。 2、『皇明資治通紀』の出版、及びこれに関連する資料の収集 国内外の漢籍目録等を繙き、関係資料の収集に努めた。また必要に応じて、目録等のリプリントを購入した。 3、『皇明資治通紀』の版本、その他出版情報の調査 東洋文庫、国立公文書館、国会図書館、京都大学人文科学研究所、東北大学附属図書館所蔵の『皇明資治通紀』の版本を調査した。とくに、序文、跋文、目録、凡例など出版情報に関する資料を収集した。『皇明啓運録』8巻や『皇明資治通紀』14巻、『皇明通紀法伝全録』28巻、『皇明従信録』40巻、さらに、『皇明続紀』3巻、『皇明通紀述遺』12巻との相互の継承関係についても、調査を進めた。
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